ファベーラに住んでたことの話

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ブラジルの友人にルイスという男がいる
こいつは一言でいえばアホだ

初めてブラジルに来た時、僕はミナスジェライス州のベロオリゾンチという所に住んでおり
ルイスは僕が当時よく通っていたレストランで働いていた
ベロオリゾンチはサンパウロと比べて東洋系が全くいない
人口230万の都市でも、日本人が街を歩けばそれは目立つ。顔をガン見されたり、中にはわざわざ振り返って確認する人とかもいた
ルイスもそんな僕に興味を持っていたんだと思う
毎日通っているうちに話しかけてくるようになった

”今度俺の町に遊びに来いよ”
とんとん拍子に話が進み、彼の家に遊びに行くことになった
ルイスはベロからバスで約2時間弱のところにあるRibeirão das Nevesという所に住んでいた
バスの中でルイスが”将来弁護士を目指している”とか”町のサッカー大会で得点王をとったことがある”とかいう話をしていたのを今でも覚えている
やがて目的地に到着しバスを降りると、そこには街のような舗装されたアスファルトの道路などなく、真っ白だった僕のスタンスミスの靴が赤茶色の土で汚れた

バス停から歩いて15分のところにあるルイスの家は
穴だらけの赤レンガ造りで、シャワーはお湯がでなくて、トイレに便座もなかった
そんな家の中には
土木やってるパパ
セントロのスーパーで働いてるママ
超ヤキモチ屋の嫁
生まれたばかりの息子
僕と同じ年の姉
小学校低学年の妹
汚い犬4匹、猫と鶏
とてもにぎやかな一家が暮らしていた

狭い家の中で僕はルイスの姉と妹の寝室で寝かされたが、この部屋は尋常じゃないほどの蚊がいて
僕が夜中にあんまり蚊を手でパンパンやるもんだから、ルイスの姉がキレて殴り合いのケンカをしたこともある
以降僕は居間のソファで扇風機をつけて寝させられる

そんな感じで僕も普通に家族の一員として生活してた

それから僕はベロにアパートがあったものの、一週間の大半をルイスの家で過ごす生活を送ることになる
ルイスのファミリーや近所のアミーゴらと接していくうちに、このルイスは町のとんでもない傾き者だということがわかった
弁護士を目指しているとかほざいておいて中卒やし、サッカーをやらせたらクソ下手くそだった

ルイスは僕にポルトガル語の下ネタや、女の子の声のかけ方などいろいろと教えてくれた
おかげで僕は辞書に載っていないようなポルトガル語のスラングをこの時期にかなり覚えることができた

一時期ルイスは浮気して、奥さんと子供を捨てて町から姿を消したことがあった
しかし僕は構わず僕はこの町に通い続け
やがて近所のジャポネーズとして認識されるようになり一人でもフラフラと表を歩くようになるが
どうしても一人で行かせてくれない場所があった
そこはルイスの家から100メートル程坂を上ったとこにる所で、そこにはガチのファベーラがあると聞かされていた
入り口には武器を持った兵士がいて、ルイスと一緒でなければ入れない
多分あの先には映画のシティ・オブ・ゴットみたいな世界があるんだと思う

ある晩ルイスと家で酒を飲んでいた
外がやけににぎやかだった
”聞こえたか?今の何の音だと思う?”
ときいてきたので花火じゃねぇ?と答えると
それは花火ではなく銃声だと教えられ、自分のいる環境がどのようなところなのかを再認識した

平和の国日本に住んでいた僕にとってここは本当に刺激的な日常であった
深夜に仲間達と道端でコカインを吸ってて、必死でポリから逃げたこともあるし
バーで飲んでたらヤンキーがからんできてビール瓶を投げつけられたこととかもあった

何より僕は一度だけAviãozinhoというのをやらされたことがある
Aviãozinhoというのは簡単に言えばパシリで
僕に与えられた役目はファベーラの入り口で凧を揚げていて、ポリが来たら凧を下げて住民に知らせるというものだった
最近はFugeteiroとかいって凧の代わりに花火を使ったりするらしい
とにかく訳のわからんまま、ってかどれがポリなのかもわからんかったがとりあえずやってた

僕はブラジルのかなりディープな部分を体験した

このルイスとは仕事でブラジルに駐在した際に6年ぶりに再会した
会社からファヴェーラ立ち入り禁止令が出ていたが、カーニバルの時期にベロに遊びに行きお世話になっていたのだ
ルイスは全く変わっていなかった。というより進歩していなかった。
ただ僕より若いくせに中年太りした体になっていた

僕は彼の喋る汚いポルトガル語が理解できなくなっていた

なぜ今回僕はブラジルに来たのか?会社でこういう仕事をしているという説明をしてもコイツの頭では理解できなかったようだ
ルイスは僕がサンパウロの日本食レストランででも働いているのだろうと想像していたらしく、給料を言ったら驚いていた
昔の話をしていてあの子は元気か?アイツはどうしてる?とかいう
コカインで捕まったとか、家族を捨てて蒸発したとかダークな答えが返ってきた。。。。
当時はまだ1歳だった子がもう7歳になり、さらに2人の妹が増えていた。。。。

もうこの先彼に会うことはないと思う
しかし僕はルイスは今でもブラジルでの一番の友達だと思っている
何より彼の家族には本当に感謝している

だからという訳じゃないけれでも僕は感謝のしるしとして
ルイスの子供に結構高いオモチャを買って送ってあげた
後できいたら子供に遊ばせないで自分ばっか遊んでるらしい。。。。
6年前に僕が貸した30レアルも結局まだ返してもらっていない

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